"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

「効率が10倍アップする新・知的生産術」

正月にあまり本を読まなかったので。成人式とか自分には関係ないしお得な休みだ。


弾氏のレビューを読んでしばらくしたら、急にムラムラと購買欲が出てきた。ジュンク堂の近くにいたからかもしれない。

帯で著者の勝間和代氏がラジオ、様々なIT機器で武装している姿を見れば、そのようなIT機器(ガジェットと呼ぶ人もいる)を纏い、ストレージと半ば同化して生きる近未来人的な知的生産の方法について書いた本という第一印象を受けるに違いない。見返しをまるまる使った昔の児童向け雑誌を連想させる丁寧な説明が輪をかける。前書きには

この本でめざしたいのは、空気のようにIT機器を使いこなしながら、本などのオフラインの様々な手法ともシームレスにつながって、生産性を上げる技術です。

と書いてあるけど、内容は100%そういう話というわけでもない。ってわけでこのプロモーションはなんだかなー。自分もガジェットは好きだが、重い、コードが絡んで鬱陶しい、というつまらない理由からなかなか「空気のように」は身に着かない。とはいえ、そういう「一見浮いてる」ガジェットファッションも光ファイバー網のようにインフラ化・コモディティ化する流れは遅かれ早かれくるだろうということを考えると本質的な議論ではない。

さておき。前書きにはマッキンゼーやJPモルガンなど超優良企業から内閣府男女共同参画会議までに至る幅広いステージで活躍してきた著者の経歴を見ることができるが、自分に近いハチロク世代はてな民にとって特にイメージがわきやすいと思われるのは

  • 19歳で公認会計士2次試験合格(当時史上最年少)
  • 21歳で出産
  • 23歳でオンライン情報処理技術者試験(現在のテクニカルエンジニア)に一発合格

のあたり。

女性には敬遠されがちなITに関して、この程度技術的なことを書ける女性が日本にいるということを知るべきだと思った。コンサルなどでみっちりたたきこまれるフレームワークなどの話も噛み砕いて教えてくれるのもありがたい。もっとも、生物の素養がない自分でも細胞記憶の話はさすがにどうなのかなーと思ったけど。

読書法に関する既述も興味深かった。著者はあくまで読書スピードを最優先するため線引き・まとめ書きをしないらしい。この辺りまで読んだとき仕方なくマーカーを筆箱に片付けてしまったが、敢えて数箇所引用させてもらうと

  • マスメディア情報を減らし、実体験、他者体験、良書を3大情報源とする
    • Garbage In,Garbage Out(ゴミの情報をいくら大量に放り込んでもゴミしかできない)
  • 5000円以内の本は迷わず買う。飲み代1回分だと思えば惜しくない

なぜなら、人が手に入れていない情報やまだ一般的でない情報ほど価値が高いので、人が敬遠する高い本にこそ、すばらしい情報が眠っているかもしれないからです。しかも、高い本でも出版しているということは、出版社や著者がそれだけの価値があるということを前提で、編集し、出版しているのです。

  • 保管しておくのは買った本の10分の1

私たちのコストで最も高いコストは住居コストです。1000〜5000円で買い戻せるものを、もったいないからといって読まない本を本棚に置いておくこと、こちらのほうが余程もったいないのです。

といったポリシーは蔵書管理の具体的な参考にもなるかも。でもまだ「買った本の9/10を捨てる」覚悟はないなぁ。ポリシーに従うなら本書はハードカバーで出したほうがよかったんじゃね?と思ったのは自分だけ?

「スポーツ自転車+GPSつき携帯ナビ+SPD専用ペダル(ペダルを引くときにも加速できる)」の組み合わせは猛烈に魅力的。はてなのjkondo社長もすごいが、著者も1日に20〜40kmを自転車で移動するという行動派。雨の日はいったいどうするのかすごく知りたい。

中3くらいのときに習得を試みたフォトリーディングについても少し言及があった。そういえばこの本のタイトルも「10倍」だった。

あなたもいままでの10倍速く本が読める

あなたもいままでの10倍速く本が読める


当時は友人と「胡散臭いなー」とかいっててすぐにやめたけど、この人がやってるとなると説得力あるな。劇場のイドラじゃないけど。
Googleマインドマップはよくある話だったが、他にも

  • オーディオブック
  • 親指シフト
  • 名刺と人脈
  • 何でも数値化して考える習慣
  • 出版

とか、内容もソースも興味深いテーマが色々あった。自分は本の読み方が下手なのかあまり定着しないのでまた読み直して咀嚼したい。

P.S.
たまたま脱・下流エンジニアでも本書がレビューされていた。実ははてなダイアリを始めた時期も近かったりするという共通点を最近発見して嬉しい。