"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

誇り

ある裏方のチームに所属していた。

もっとはっきり言うと文化祭の演劇の手伝いの手伝いの仕事だった。お遊戯の続きみたいな演劇はともかく、高校の自主制作演劇を見るのは好きだった。演劇も仕事も好きだったんだけど、少なくとも周りで演劇は学内では格段アツいイベントではなかった。大学に入って劇団が乱立しているのをみて、これが普通だよな、と安心したが、中高ではやはり模擬店など屋外で元気に盛り上がる系のイベントが人気で、客層も限られているのに準備の場所と時間をとって他の企画とたびたび衝突する演劇は少し煙たがられている節があって寂しかった。

そういうわけで、自分が応援している人間が「自己満足だろ」「邪魔なんだよ」と(時に行間で、時に面と向かって)言われる場面が何度かあった。関係者とはいえ直接的な被害を被ったわけではない。でも自分がなじられているのとほとんど同じ状態だった。「文化」祭なんだからもうちょっと文化的なことにも目を向けようぜとか、他の企画だって結局自己満足じゃないか、とか言おうと思えば言えたかもしれないが、勇気を出して言うことはなかった。自己満足なら自己満足らしく、まっすぐ前を見てルサンチマンは心に秘めておこうと思った。*1

引退時に、いろんな部署から後輩に色紙を贈る機会があった。自分はどうしようもない不甲斐無い先輩だったが、後輩には誰から何を言われても楽しく仕事をしてほしかった。だから伝わるかどうかわからないけど色紙にこう書いた。


誇りを捨てるな


今気づいた。自分に言い聞かせる言葉だったんだ。






それだけです。すみませんすみません

*1:今でも「自己満足」という言葉は嫌いだ。よく考えない人が使うと攻撃のための攻撃にしか聞こえない。「傲慢」や「言い訳」と同じ。