"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

一葉と伊勢屋

今日は勤労感謝の日だが、樋口一葉の命日でもある。 僕の住んでいる文京区の西片や本郷はちょっとした追悼モードになり、白山通りの一葉の終焉の地に建てられた碑には区の教育委員会や町会からの献花が添えられる。 この地域のコミュニティがいかに彼女を愛しているかを垣間見る。

一葉は1896年の今日、24歳にして夭折する。一葉が足繁く通った伊勢屋質店が1階部分のみ公開されていたので、正直いって文学にはさほど明るくないけれども行ってみる。静かな生活路に、20分ほどの行列ができる。

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一葉ももちろん困窮していたが、 質屋は質屋で期限切れの質札を集めて襖にし、それがさらに駄目になるとはたきにしたという。 物を粗末に扱えなかった時代が偲ばれる。

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少し離れた菊坂の旧居跡には井戸が残っている。閑静で少し入り組んだ、京都をも彷彿とさせる路地の合間にひっそり佇みつつ、汲み出せば渾渾と湧きいでて未だ現役であるのだから驚きだ。

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質屋には日記の抜粋なども公開されており、現実にこの地に住まい往来した故人の息吹を感じる。 この時間感覚をテクノロジーによっていかに豊かに修飾していくか、そこに想像を膨らませながら歩くのに本郷はうってつけの街だ。