"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

諏訪・岡谷訪問

14日に長野県の岡谷に行ってきた。これは京大からグローバルCOEプログラムに採択された6プロジェクトのうちのコアプロジェクトで、社会情報学・フィールド情報学の喜多研の研究の一環。テーマは「ユーザー参加型のものづくり」で、具体的には「京大生が使いたい傘」を作る。自分が誘われたのは去年喜多研のプロジェクト型講義「情報フルーエンシー」に参加したからで、こういうときはやはり何にでも手を出してみてよかったなぁと思う。

時計をはじめとする精密機械産業で知られる諏訪・岡谷地域には活発な製造企業集積があり、今回は実際に金属加工を委託することになる関連工場の訪問だった。これからプロジェクトでお世話になる皆さんへの挨拶と、実際の開発へのキックオフみたいなものを兼ねたのだが、最初に訪問したインダストリーネットワークという会社では活気のあるブレストができたし、工場では大型金属板を24時間延々全自動で加工し続けるような作業ロボットを見せてもらったりして(メディアで見ることはあっても、実際にこのレベルのオートメーションを目の当たりにするとは思っていなかった)、なかなか刺激になった。インターンシップにでも行かないとこういう機会はなかなかなさそうだ。

ユーザー参加なるキーワードそのものはポジティブなイメージを持ってはいるが、やはり口で言うほど甘くはない。エンドユーザーを指すかにみえる「ユーザー」という語は実は開発の隣に位置づけられた設計層のユーザーのことであったり、ということからもわかるようにエンドユーザーと開発者の間にはボキャブラリーの壁がある。いわば言語の壁であるがこれをどう「翻訳」するかが一つの難点のようだ。

重点は「ユーザー参加開発」であるし、とにかく今の自分にはこのプロジェクトをこなすだけの余裕しかない。しかし、物づくりに当たっては新たな価値や産業、文化の創出というより広い視野でとらえないともったいない、ということを学んだ。「仕組み」を考えるのは面白い。傘をネタにこれを成功させた人はまだいないようだ。いま百貨店やコンビニで買える傘には全くオリジナリティがないが、可能性とニーズはある。

研究プロジェクトであると同時に開発プロジェクトでもあり、どこまで書いてよいのかよく分からないのでまだ大人しくしているが、名古屋から塩尻までの2時間の特急で、人生で初めて電車酔いしたことをとりあえず書いておこう。