"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

リアルの遅さ

昨年末、トロントでお世話になった家族にクリスマスカードなるものを送ろうとした。ホストマザーがメールを使わない人なのでこちらのメールは知らせてこなかった。海外に何かを送るのは初めてのことだったので年賀状のような感覚で考えていたのだが、12月中旬頃郵便局に行ったら「国内は年賀状で大混乱だから今からだと着くのは年明けですよ」と少し怒り気味でいわれた(別に怒ることはないと思ったが)。感謝祭を過ぎた頃に送るのがセオリーらしい。

向こうにさえ行ければいつでも会えるのだが、連絡はとっておきたかった。仕方ないのでクリスマスカードとして送るのは結局やめて普通のDMとして送ることにした。日頃「情報」に囲まれることで半ば現実乖離し、「モノ離れ」している自分の甘さを学ぶよい機会だった。

言い訳めいた話をすると、ネットの住民にとって、リアルな世界の回転というのはときにフラストレーションがたまるものだ。ネットだとメールは一瞬で届き、何か気になったサービスは思い立ったその日から使える。前年に売れた車の台数や収益が正月が終わってもわからなかったり、カードの支払いが月払いだったり銀行が3時で閉まったりというリアルの常識は、こういったネットの常識からすると信じられないくらい前近代的だ。
そういうシステムの不便には多分、人間の介入、世界の格差という単純な要因の他にもいろんな原因があって、掛け商売や予定価格(原価を早期に予想計算で求め、後でのんびり差異を計算する)といった概念が消滅するのは現実的にはおそらく遠い未来のことになるのだろう。

ハッカー倫理と言えば、犯罪者というイメージを抱く方もいるかもしれないが、私がここで述べるハッカー倫理とは、金銭的な報酬を表現活動のインセンティブとするのではなくあくまでも、仲間からの賞賛を創作活動のインセンティブとして活動している人々が有する精神のことを指す。

ハッカー倫理とインターネット社会の精神 - 女。MGの日記。

id:iammgはハッカー倫理をウェブによって増幅された自己評価欲としてとらえていたが、見方を変えればリアルのこういった前近代的な部分を許さない、Larry Wallのいう「短気」でもあると思う。

 今や知らぬ人などいないスクリプト言語であるPerlの作者、ラリー・ウォールLarry Wall)は、当代一流のハッカーです。彼によれば、プログラマーの三大美徳は、

  • 無精
  • 短気
  • 傲慢

なのだそうです。

まつもとゆきひろのハッカーズライフ:第1回 ハッカーとの遭遇 (2/2) - ITmedia エンタープライズ