"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

『惡の華』押見修造

惡の華(11)

惡の華(11)

地方出身者であれば少なからず本作へのなかなかの没入感と尾を引く読後感(そして人によってはヒステリックな嫌悪感)があるかもしれない。

考えさせる部分も残る。我々は成熟するにつれ様々な閉塞感や絶望を克服することを要求される。相対化された絶望は幼稚なもの、中二的なるものとして抑圧される。それが世代を超えて連綿と続き、ヒトの社会が維持される。著者でさえ今では笑える思い出のようなものとしてこれを描いているのかもしれない。

しかし、克服できないまま大人になってしまい、まともな社会人の皮を被ってごまかしに生きている人間がいたらどうなるのか。短絡的ではあるが、絶望が、犯罪や戦争のような悪の再生産に加担する理由になってしまうとしたらどうか。

それを描くのは本作ではない。読者が描くのだ。