"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

ある組織とある男の話

一つ嘆息を禁じ得ないことがあった。発表会は研究リテラシーの4プロジェクトと、教育交流会の活動報告がさらに合同で発表するというのが結局の真相だった(直前まで自分たちの作業が精一杯で、発表の場については一切知らなかった)。他の研究プロジェクトはどれも興味深い内容で、また特に交流会の発表は例年の活動である香港科学技術大学への一日留学体験記、ということで非常に魅力的な報告だった。残念ながら交流会の活動は現在停止しているらしく、これが事実上最終の活動だった。もっと詳しく話が聞きたかった僕は気になって夜の懇親会で訊ねてみた。

活動停止の理由は、「一部の者が交流会を私物化しようとした」ことらしい。

僕はその話に聞き覚えがあった。というか、交流会を私物化し結局活動停止に追い込んだその人物を僕はよく知っていた。以前僕を交流会のボックスにこっそり案内してくれた(ボックスへのアクセスは一応機密になっていた)とき、彼はここを自分の軍団で乗っ取り第二の部室とする、という「野望」を語った。当時はへぇ、などと面白半分に聞いていただけだったが、思えば彼はこのとき既に、ある意味で僕の人生にダメージを与えていたのだった。

「残念ですね」それ以上この話に突っ込むのはなんだか空しかった。僕が自分に感銘を与えた組織に加わる可能性を彼は確かに潰したけれど、パワフルで学問好きな彼への尊敬に変わりはないし、このことで彼を恨むつもりもないし、彼の軍団にかける愛情も何となく理解している。寧ろ交流会の側こそ、そんなことで活動停止に陥らずにもう少し頑張ってほしかった。

例の留学計画は交流会とは独立に復活するかもしれない。この一件はもう忘れておこう、と祝いのビールに酔いながらふと思った。