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"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

ビジネスコンテスト

 8/27-29の3日間、京大VBL(ベンチャービジネスラボラトリ)主催、ネオトラディション社企画の「グローバルリーダー育成カップ2009」*1に参加したので少しまとめたい。

僕とビジコン

 lang-8に居候してベンチャーについて勉強していた頃から、ビジコン経験の豊富なyangyangさんから「君もビジコン出てみたら?」と何度も言われていたのだが、ベンチャーの世界に首を突っ込んでおきながら、ビジネスに対する勇気も関心もまだ薄く、なかなか足を踏み出せないでいた。


 今回のコンテストに応募してみた理由は3つ。

  1. 就職活動の経験がないので、標準的なM1の夏休みとしてインターン的なものに参加してみたかった
  2. 賞金(100万円)や最優秀個人賞(スタンフォード大での研修権)が魅力的だった
  3. 応募の誘いをかけられたとき、このチームならなんとかやれると思った(thanx to id:yaotti,id:Sixeight,id:hxmasaki!)

しかし、どれも本格的にビジネスに関わりたいという動機ではなく、個人的にはこの点で他のメンバーに対して勝ち目がなかった。そういう意味で非常にレベルの高いコンテストだった。

一次予選

 予選前に与えられた課題は「リーダーシップを発揮できると思うところを述べよ」。ここでは高校や大学での経験、Webでの活動などを述べた。


 予選会場で答えた課題は「最も重要だと思う社会問題とその解決策を答えよ」。他の選択肢に「首相になったとしたら実施する政策を答えよ」などがあったが、社会制度や時事問題に疎く論述の訓練をさぼってきた自分には先の問いくらいしか答えられるものがなかった。ここでは大学のシステムシンキングの講義で考えた「貧困の再生産」への解答を流用した。


 ホーチミンのサイボウズオフィス*2に足を踏み入れる直前に、予選通過の連絡がかかってきたが、あまり実感がわかなかった。

メンバー

 2次予選の会場は京都の新興*3、西京高校。畳の部屋に案内されると20人くらいがごろごろとくつろいでいて、初対面の人も多いはずの空間でBGMを堂々と流している猛者もいる。初参加のビジコンとしてはあまりに予想とかけ離れているが、とにもかくにもこの部屋が戦略立案室となり生活空間となる。気分が奮い立つ。


 3人 x 11チームは大学ごとに数えると

  • 京大:8人
  • 慶應:5人
  • 早稲田:5人
  • 東大:3人
  • 立命館:3人
  • 阪大:1人
  • 立教:1人
  • 上智:1人
  • 中央:1人
  • 同志社:1人

という構成で、残りの4人は何と高校生だった。また慶應や早稲田からの参加者は出場経験者だったり、既に互いに知り合いだったりして数の多い京大生に劣らぬ存在感があり、風土の違いを意識せざるをえなかった。

夢と現実

 本ビジコンの評価基準を3種類に分けると

  1. 構想力、新規性
  2. 実現可能性、戦略性、収益性
  3. プレゼンテーション

となるのではないだろうか。夢の大きさ、現実との距離、そしてその両方を擦り合せて形にし人前に出す能力が問われる。そしてこの「夢と現実」のテーマは、僕にとっては本ビジコン全体を貫くものだった。


 本ビジコンの課題は、

  • 世界にイノベーションを与えるプラン

あるいは

  • グローバルな課題を解決するプラン

を考えよ、という極めて抽象度の高いものだった。いかに大きな構想で課題をとらえるか、そしてそれをいかに現実的な事業計画に落とし込むかという二つのポイントは明らかに両立困難なものだ。それ故に夢と現実のバランスに悩まされていたチームは多かったのではないかと察する。


 初日に初対面のチームメイトと出会った時、僕が持っていったのはコミュニケーションやAR(拡張現実)に関するアイデアだった。原案の一つは僕のものではなかったが、本当にこれが実現したら世界が変わるという気持ちでプレゼンテーションに望み、チームメイトからもある程度の賛同を得た。しかし、既存製品と激しく衝突してしまうことがわかり、新規性で優位に立てないという判断で取り下げることにした。


 その代わりに僕らのチームが認識を共有できた問題は、貧困と教育に関するものだった。1次予選で考えた現状の教育システムのモデルと問題をそのまま話し、これに対する解決案を3人で考えることにした。

迷走

 全く初対面の3人だが、初日の夜は散歩にまで出て頭を突き合わせて教育について考えた。しかしアドバイスをくれるメンターの方々に相談するうちに、自分たちの構想では慈善的、あるいはボランタリーな部分への依存が高いことがわかった。「そのプランを実現するためには、事業家ではなく政治家になるべきだよ」というアドバイスを聞いたとき、改めてビジネスコンテストとは何なのかを知った。一日考えた教育に関するプランを、僕らは捨てた。


 まさに迷走だった。新しい適切なテーマはなかなか見つからない。やはりコミュニケーションに関するプランを捨てきれない自分に気づいた僕は、もう一度コミュニケーションでいってみないかと提案した。チームの賛同を得て、中間発表までのプレゼンテーションを組むことにした。


 朝の中間発表まで、残り数時間。

プレゼンテーション

 リーダーが作成した第2日と第3日のプランのプレゼンテーション構成を示すとそれぞれだいたい次のようになる。

  • 中間発表(第2日朝)
    • 新規事業の構想、コンセプト
    • 新規事業企画の背景、社会に対する問題意識
    • 新規事業による革新のメリット
    • 問題点を解決する新規アイデア
    • 社会における新規アイデアの活用案
    • まとめ(新規事業による革新のメリット)
  • 2次予選(第3日朝)
    • 新規事業のコンセプト、ミッション
    • 新規事業による革新のメリット
    • 新規事業に対する企画背景
    • 問題点を解決する新規アイデア
    • 既存の要素技術の紹介(新規アイデアの実現可能性)
    • 新規事業で狙う市場分野
    • ビジネスモデルの概観
    • 競合分析とビジネスモデルによる対策
    • 新規事業の長期計画
    • 社会における新規アイデアの活用案とそれぞれの収益構造
    • 5カ年の事業計画
    • 新規アイデアのもたらす世界観
    • まとめ(新規事業による革新のメリット、事業のコンセプトとミッションの再掲)


 ご覧の通り、予選でのプレゼン内容は中間発表でのプレゼン内容をもとに、主にファイナンス的な要素を固めたものとなっている。ファイナンスとマーケティングの講義は第2日にあるため、その前の中間発表時点ではまだ収益化についてはほとんど問われない。しかしビジネスコンテストで評価を受けるためには、収益化を無視することはできないのは言うまでもない。第2日の夜はビジネスモデルについて寝不足で疲れた頭を捻り続けることになった。


 頭の切れるファイナンス担当が、回転が追いついていない僕を尻目に非常によい仕事をしてくれたのだが、企業会計に明るいチームとはいえなかったため事業計画に落とし込むのが遅れてしまい、第3日の朝、2次予選の直前の10分程度で粗めの事業計画を書くというペースになってしまった。


 結末を言うと、2次予選を突破することはできなかった。決勝に進んだ4チームは完成度の高い収益モデルを提示したチームばかりだったため、やはりビジネスコンテストだから当然かという納得が半分、参加前に会計の勉強くらいはちゃんとすべきだったという悔しさが半分だった。


 仮に出場前の自分に何か一つアドバイスができるとしたら「簿記2級くらいは抑えておけ」だろうか。

チーム

 僕らのチームは、夢を語る僕、綿密な事業計画を練る相方、そして秀麗なプレゼンテーションを作ってくれる若いリーダーを戴いた。僕ははっきり言ってマネタイズが分からなかったので、代わりにプランの技術的実現可能性をハードウェア企業の方と相談しながら検討した。


 特に2日目は、金曜の17時を回るまで、学生起業家*4を名乗って大手メーカーやプロ野球関係者に電話で質問するといった、今までの自分にはなかった行動力を発揮できた。諦めずにここまでできたのはプランやその構想に対するチームの真剣な執着と、もはや起業前提で全てを回すという「退路を断つ」意気込みがあったからだ。


 分業とチームワークはうまく機能していた。チャンスを掴むために、各自がもちあわせた縁と能力を最大限に活かし切る。夢と現実の狭間で「そもそもイノベーションとは何なのか」というところで熱くなってしまい議論を激突させたこともあったが、そこから前進できたからこそチームメイトに恵まれたといって間違いはない。

キャズム

 今回気づいたことの一つは、技術者あるいは技術愛好家(僕はそちらのサイドに含まれるという前提で)とそれ以外の人の間でいかに情報や関心の共有が行われていないかということだった。IT系学生やTwitterユーザーなら誰でも知っているようなありふれた話題が、ビジコンの現場では全く通じず、既に実現している技術であることを知っている人もごくわずかだった。


 界隈の人間なら誰でも考えそうな、それどころか既に実現し始めているアイデアであるあまり、どうやって新規性を強調するかという点に一人苦心しているつもりだったのだが、寧ろ逆に構想力、新規性、実現可能性の全てを評価してもらえたようだった。それはつまり、いかに技術を的確に市場に届けるかというところで誰もが苦労しているということなのかもしれない。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d3/Technology-Adoption-Lifecycle.png/800px-Technology-Adoption-Lifecycle.png:image:w500

ビジコンで得たもの

 普段構想力や技術的な面だけでものを捉えがちな自分にとって、ビジコンを通して収益化やマーケティング的な観点を養おうという狙いは、達成とは言わないまでもかなりエネルギーを得た。受賞はできなかったが、そういった目前の目標の向こうに隣り合わせて見える実際のビジネスに以前より近づくことができたし、進取の気性に満ちた新しい仲間とも知り合えた。yangyangさんが何故僕に、ビジコンに出るようアドバイスしてくださっていたのかもわかった。


 これを機にまた一つ、ハリボテの壁*5を乗り越えたい。


 二夜連続して遅くまで僕らを支えて下さったメンター・講師・運営スタッフの皆様、3日間を共闘したメンバーの皆さん、そして初対面にも関わらず意気投合して一緒にビジネスプランに取り組んだチームメイトの二人、どうもありがとうございました。

*1:[http://www.neotradition.co.jp/global-leader:title]

*2:[http://d.hatena.ne.jp/satzz/20090820/1250787466:title]

*3:名前が変わり進学校として頭角を現し始めたのが最近という話

*4:正確には「ベンチャーキャピタルからの支援が受けられるかもしれない、起業準備中の京大生」

*5:[http://d.hatena.ne.jp/satzz/20090505/1241540124:title]