"血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。"

gameとgambleの語源

仕事に勉強に忙しい方には少し残念だろうが、ホイジンガはhomo ludens(遊ぶヒト)と言った。
ここでludensはラテン語動詞ludo/ludereの現在分詞である。
ludereは英語ではillusion(幻), allude(ほのめかす), delude(惑わす), elude(逃げる), collusion(共謀), ludicrous(こっけいな),prelude(序曲)といった単語に継承されている。
このようにギリシア語/ラテン語由来の語根は英和辞典でも注意深く見ていれば視野に入ってくるため、意味は大きく変わっても形態的にはピンと来る例が多い。


ところで、ゲーム理論ゲーミフィケーションなど凝った用語を持ち出されるよりも昔から何かしらの形で誰しもが親しんでいるgameという単語がある。
この出自はそれほど分かりやすくないので専門サイトの助けを借りてみる。
Online Etymology Dictionary
これは@taleda25さんに教えてもらった英単語の語源を遡って調べることができるサイトで、気になった単語を引いてみるだけでも暇つぶしになる。


さてgameである。
古英語ではgamenとなるが、もともと英語の祖先にあたるゲルマン祖語のga-(集合接頭辞 *1 )とmann(人)からなり、"people together"の意味であったことがわかる。
同じgamenから派生した言葉にbackgammonがある。
一方gambleという言葉がある。
並べてみないとなかなかわかりにくいが、これもgamenに由来する中期英語の方言gammlenがもとである。


ヒトが集まると書いてgame/gambleと読む。
ソーシャルゲームなどとわざわざ言葉を飾らなくとも、原始のgameの本質にはソーシャル性があったのである。そしてgambleしかり。
当然gameという言葉で示されるヒトの営みの歩みにも踏み込んでみたくなるが、なかなか示唆的ではないだろうか。

*2

*1:ただしこれは再建された祖語におけるもの、つまり文献にある語彙でなく推定された語彙である

*2:近隣言語から「遊び」の周辺語をさらに拾ってみる。 フランス語ではjeuという語がある。こちらはラテン語のjocumを親とし、英語のjoke,jestと同根である。 ゲルマン諸語にはgameと似た語が見いだされるが、そのうちのドイツ語にはgameの代わりにspielen(遊ぶ)という語がある。 同根の可能性がある英単語はspiel(長口上),spell(代わりに働く)を除けばドイツ語からの借用であり、ドイツ語特有の事情かもしれない。 残念ながら上のサイトでは英語のことしか分からないが、なぜゲルマン諸語でドイツ語だけこのようになっているのだろう。